つまんなさの果ての千夜一夜

各自キャラクターを作って投稿できます。 なるべくつまらないキャラクターにしてください。
一人1日1回投稿できます。なるべく話をつまんなくしてください。
メタ・内輪・ノノネヌ・迂闊・時系列無視・人称交雑・矛盾・投げっぱなし・鉄壁・破綻歓迎。
設定は好きにしてかまいませんが、設定がないと書けないならリリオットの隣の町アラヨットでも舞台にしてください。



カテゴリ:[ ゲーム ]


40件の内、新着の記事から10件ずつ表示します。


[40] 誰かへ

投稿者: 斬黒ナ刃奈火 投稿日:2015年 5月24日(日)19時14分5秒   通報   返信・引用

単行本刊行決定おめでとうございます。




[39]

投稿者: 斬黒ナ刃奈火 投稿日:2015年 4月 9日(木)08時12分42秒   通報   返信・引用

「見つけた……!」

 菱左半〔リワインド〕によって巻き戻された神の双眸〔ファーザーズ・アイズ〕が捉えたのは人間の男だった。尾も翼もなく、目立った甲虫〔バグ〕の徴もない人間。おそらくは鳥人の翼なしか竜人の尻尾切りのどちらかだろう。俯瞰図からは上半身裸の彼の肉体と、黄金色の頭髪が見える。

 アゲハは菱左半〔リワインド〕の加護を弱め、時を巻き戻す速度を緩めた。男は今朝、石を二つ積み上げたようだ。アゲハが神の双眸〔ファーザーズ・アイズ〕に映された景色を精査する傍らで複眼から外を覗くと、ちょうどカマキリによって崩されていた積み石がその二つだった。

「ようやくか」

 震動剣〔ヴィヴリオブレード〕に青い蒸気を吹きかける排気口を左腕から離して、カマキリはくぐもった声を出す。マナの吐息に触れた震動剣〔ヴィヴリオブレード〕の刃は徐々に鋭さを増した。

 さらに時を遡り続けて、アゲハは男が来た道を特定する。線の先は森の中央。



[38] (無題)

投稿者: 斬黒ナ刃奈火 投稿日:2015年 3月 6日(金)08時40分48秒   通報   返信・引用

あらよっと執筆ストック切れました



[37]

投稿者: 斬黒ナ刃奈火 投稿日:2015年 3月 5日(木)21時45分57秒   通報   返信・引用

 静止した俯瞰図。アゲハは腕の端末に触れて菱左半〔リワインド〕を呼び寄せる。戻り続ける時の流れの中で俯瞰図は静止したまま。頭の中に映し出された無機物の森林は微動だにせず、その上を流れる青い雲と右下に記された数字だけがゆっくりと巡り回る。

 時の遡行は忍耐との勝負だ。アゲハは瞳の内側に概念的に映し出された地図を静かに観察し続けた。砂場を小箱〔キャスケット・オブ・サンドボックス〕で。その一つの円環〔サーキット〕はアゲハの心に取って代わる。思考回路を肉体から鋼体に換えた者は、その上に魔術〔ウィッチクラフト〕で作られた仮初の思考を走らせることが出来る。それは肉体の思考と比べ単純で、明確で、勤勉で、高速で、支配的かつ合法的〔ヴァリッド〕だ。仮初の思考は合法的〔ヴァリッド〕である限り決して止まらず、その間の全てを対象から奪う。

 砂場を小箱〔キャスケット・オブ・サンドボックス〕……この円環〔サーキット〕は小規模な魔術〔ウィッチクラフト〕で、詠唱の始めに視界に円や四角を描き、その内にある物を監視し続ける。そして、監視対象が描かれた領域から消失したり持ち出された時に非合法的〔インヴァリッド〕になり消失する。この円環〔サーキット〕を創造した魔女〔ウィッチ〕は砂場遊びをしていた幼い子供達からヒントを得た。子供達が砂場遊びをしていた時、ある子供は輝石を砂の山の頂上に置いたが、彼が所用でしばらく砂場を離れている間に輝石は別の子供に持ち去られてしまった。子供はひとしきり泣いた後、再び砂の山に別の輝石を置いた。今度は指で輝石を囲むように溝を描き、そこを宝石箱にしたのだ。砂場を小箱〔キャスケット・オブ・サンドボックス〕の名はそのシチュエーションを魔女〔ウィッチ〕が参考にして付けたものである。

 砂場を小箱〔キャスケット・オブ・サンドボックス〕は単純な円環〔サーキット〕であるため、感覚を受容する思考が存在しない。アゲハは菱左半〔リワインド〕により等速に遡り続ける映像を監視し続けたまま、隔絶された世界に置かれた。アゲハには陽の光もカマキリの声も石が崩れる音も届かない。円環〔サーキット〕に身を任せたアゲハはしばらくの間もの言わぬ彫像となった。

 大地を回る影がおよそ半周した時、アゲハの円環〔サーキット〕は非合法的〔インヴァリッド〕になった。砂場を小箱〔キャスケット・オブ・サンドボックス〕は積み石の一つの崩壊を検知すると、自身をマナの光に還してアゲハに思考の制御を返した。



[36]

投稿者: 斬黒ナ刃奈火 投稿日:2015年 3月 4日(水)07時54分32秒   通報   返信・引用

 かくしてアゲハは瞑想に入った。主の双眸〔ファーザーズ・アイズ〕が覗けるならば、菱左半〔リワインド〕も力を貸してくれるだろう。天使たちの力を借りられるかどうかは本人の資質よりも所有端末がその天使を祀っているかの方が重要であるが、アゲハが甲虫〔バグ〕に改造される前から一緒だったこのエイボス支給の端末には当然菱左半〔リワインド〕も祀られていた。アゲハの複眼は瞑想中も揺らぐことがない。アゲハの全身から青いマナが気迫と化して溢れ出していく。

「オラアッ!!」
 カマキリは積み石を殴り壊した。カマキリの渾身の一撃により、石はあっさりと崩れ去る。何の事はない、ただの衝動。無数にある石の一つが壊れた所で、誰も気には留めないだろう。

 カマキリは振り返り、アゲハを見た。アゲハは青い奥拉〔オーラ〕を全身で燃やしながら祭儀に集中している。ほらみたことか、アゲハだって気にしていない。カマキリは無反応のアゲハを眺めながら「チッ」と排気口の奥を鳴らし青い蒸気を吐いた。

「オラアッ!!」

 カマキリはもう一つの積み石を、今度は右足による回し蹴りで破壊した。左足はしっかり地につけ、右足の車輪を駆動させて加速したキックには寸分の迷いもなく、遠心力のついた右足はさながらハンマーのように積み石を打ち砕いた。右手で打ち砕いた時よりも派手に石が飛び散った。

「ハァ……ハァ……」

 カマキリは青い息を吐き、昂ぶった心と熱を帯び始めた鋼体を鎮める。
 アゲハは一切動じずに、儀式に集中していた。菱左半を儀〔ライト・オブ・リワインド〕は遡る時の古さに応じて時間がかかる。かかる時間は実時間の二分の一から三十二分の一と言われているが、実際にどこまで時間を縮めて力を行使できるかは菱左半〔リワインド〕を祀る端末の性能に依る。

「時間かかりそうだな」

 カマキリは列石の広場に腰を落として武器の点検を始めた。



[35]

投稿者: 斬黒ナ刃奈火 投稿日:2015年 3月 3日(火)07時14分48秒   通報   返信・引用

 列石はすぐに顔を見せた。天術〔アストロノミー〕では俯瞰することしか出来なかったが、その列石はどれも幾つかの石を積み重ねて作られたオブジェだった。大きめの石が土台となり、上に行くにつれて段々と石のサイズが小さくなってゆく。積み上がった段はおよそ20くらいずつ。石はどれも安定する平らなものが用いられている。

 車輪を止めたカマキリからアゲハが飛び降り、格子上に並べられた石の調査を始める。カマキリは膝のボックスからバネ仕掛けのピストンを突き出し、大地に強く叩きつけた反動で立ち上がる。

「まるでサイの河原ね」

 石のオブジェの頂上にある一番小さな石を持ち上げたり戻したりしながら、アゲハはそう形容した。

 サイの河原は両生人国家アンヒビタスに存在した捕虜収容所の一つで、既にレプタライトによって制圧され取り壊されている。その時の捕虜は収容所で行われていた一切を語った。それは両生人の生活を知るヒントとなったが、中でも捕虜に課せられた奇妙な労役は人々の興味を引いた。それがサイの河原の石積みであった。捕虜は一人一人に監督官がつけられ、終われば食事になるという規約で朝から石を積むように命じられる。しかし、積み石が完成しそうになるたびに監督官が水中から釵(さい)を出して崩すため、監督官の仕事時間が終わるまで積み石は完成しない。石を早く積める者はその分課せられる積み石の数も多くなり、新しい石を積んでいるうちに前の石を崩される理不尽な責め苦を受けるため、収容された時は気概ある若者でも次第に石を積む気力を失っていったという。

「なあアゲハ、こういうモンを見ると壊したくなってこないか」

 膝のボックスに車輪を仕舞い、カマキリは積み石の一つを一瞥した。口から青い蒸気が沸き立つ。

「それよりも人を探しましょう。近くにマナの泉があることもわかっているし、菱左半を儀〔ライト・オブ・リワインド〕を執り行うわ」

 菱左半を儀〔ライト・オブ・リワインド〕……鳥人達が得意とする天術〔アストロノミー〕の一つで、主の双眸〔ファーザーズ・アイズ〕で見ている景色の過去の状態を知る高位の術である。術者はマナを媒介にして自分の目に天使の菱左半〔リワインド〕を憑依させ、その力を借りて現在から過去へ遡る。菱左半〔リワインド〕は現在を司る菱右半〔リプレイ〕と対になる片翼の天使で、菱右半〔リプレイ〕が翼人達の記憶を司るのに対し、彼は翼人達の罪を司る。エイボスの裁判ではほとんどの証拠が菱左半〔リワインド〕によって集められ、裁きの正当性が保証される。



[34]

投稿者: 斬黒ナ刃奈火 投稿日:2015年 3月 2日(月)08時02分42秒   通報   返信・引用

 人工物と表現はしたが、建物の類ではない。もっと原始的に、整然と並べられただけの列石。格子に点を打ったように縦横に綺麗に並べられたそれらは、自然に作られるものではないことは明白であったが、それが何を意図したものかアゲハにはわからなかった。
 一方、マナの泉は鮮明で疑いようもない青さだ。マナは黒魔術〔ウィッチクラフト〕を使うために必須の魔法構成要素である。それと同時に、黒魔術〔ウィッチクラフト〕製の鋼体を持つ人々に重要な動力源でもある。マナの青色は太古の黒魔術師〔ウィッチ〕が世界に満ちるマナを凡百の民にも扱わせるために彩色したものだと言われている。

 アゲハは一通り眺めて他にめぼしい物や人影が映っていないこと確認してから、カマキリに密話〔メッセージ〕で渡した。カマキリは俯瞰した風景の読み取り方はわからなかったが、中にある青を見て得心した。

「行くのか?どっちだ」
「東」
「剣と盾、どちらを持つ方だ」
「あなたは剣」

 アゲハはカマキリの左肩を叩いた。竜人達は左右を問う時、レプタライトの剣闘術になぞらえてよく剣と盾に置き換える。レプタライト剣闘術では剣を左手に、盾を右手に持つ習わしがあり、氏族により徹底して教育されるのが常だ。

 カマキリは左に体を傾け、その方向に進路を変える。

 鋼のポールが林立する空間を走り抜け、有刺鉄線の藪を左手の震動剣〔ヴィヴリオブレード〕で断ち切りながらカマキリはしばらく森を進む。下草はどれもこれも針金で、乾いた石と錆びついたポールの匂いが辺りに充満していた。カマキリの車輪の音とアゲハの息遣いと彼等の体内のマナの躍動音以外には何も聞こえない。時折、カマキリは口から青い蒸気を吐いた。

 もとより生命など人間以外に残っていない大地であったが、これほど森閑とした場所は珍しいものだとアゲハは感じた。風が凪ぎ、空には雲一つなく、マナの青さだけを映している。それは束の間だったが、まるで二人以外の時間が停止してしまったかのようであった。

 停止した時間は早贄の森の噂に重なり、死をアゲハに予感させた。アゲハは唇を噛み、予感を実感で塗り替える。大丈夫、まだ生きている。



[33]

投稿者: 斬黒ナ刃奈火 投稿日:2015年 3月 1日(日)09時19分54秒   通報   返信・引用

 感情の昂ぶりのピークが終わり、その後の長い余韻を咀嚼してからアゲハはピンを引き抜いた。二人の決別の儀式は終わった。

 カマキリの膝のボックスから車輪を出すと、両膝をついて走行姿勢を取る。アゲハは彼の首に腕を回した。カマキリの脚部から青い蒸気が沸き、五部位七組の車輪が地を抉り回転する。鋼の柱がまばらに立つ森の中に二人は侵入した。

「早贄の森に入って帰って来たものは一人もいない。編隊で上空を通過することさえ危険だというの。ここを通ることは森に生贄を捧げることと同義だっていう話よ」

「ウチじゃエイボスの防衛線が張られていると聞いたな。この森、元はエイボスの都市だったって話だ。何十年前の話か知らねえけどさ」

「軍の施設があるなんて話聞いたことないわ。甲虫匪賊〔バーグラー〕の隠れ家でもあるのかしらね」

 カマキリとアゲハは共神経〔コネルヴェス〕の影響で入り乱れた自他の記憶を言葉に紡ぎ直すことで確証と想像に選り分けていく。お互い妄執に囚われずに済んだようだ。

「少し探ってみるね」
 アゲハは左腕の装置を天に掲げた。天術〔アストロノミー〕の装置は青い光を発し、アゲハの分割された視界の一つに上空から俯瞰した景色を映し出した。

 主の双眸〔ファーザーズアイズ〕……鳥人達が得意とする天術〔アストロノミー〕の一つで、上空から見た自分の姿と周囲の光景を切り取り、視界に移すことが出来る。空を駆けるエイボスの兵はこれを用い飛行中の周囲の安全を確認する。はるか昔、この術を使用した鳥人の一人はこの光景を誰かが見ているのではないかと考えて観察者を探して上へ上へと飛び続けたことがあったが、空の上を覆う天上の炎に焼かれて力尽きるまで、何者にも出会うことがなかったという逸話がある。この空を見ているのが姿なき者かそれとも天上の炎の先にいる者か、そのどちらにせよエイボスを見守る者が超越者であることを想起させ、主の双眸〔ファーザーズアイズ〕は鳥人達の神の存在を確信へと変えて来た。そして、この術は空を飛べなくなった者にさえ等しく奇跡を授け、神への信仰を促してきた。

 今のアゲハの模造の翅は金属網が貼られただけのハリボテで、全身も甲虫〔バグ〕の姿へと堕ちていたが、天の神は隔てなく信者の祈りに応えた。

「東に人工物が見えるわ。近くに青い……マナの泉もあるみたい」



[32]

投稿者: 斬黒ナ刃奈火 投稿日:2015年 2月28日(土)06時53分28秒   通報   返信・引用

「エイボスを捨てて良かったのか」

 青い蒸気を吐きながらくぐもった声でカマキリは森の東側を見やる。その先にあるのはとても太い鋼の柱。その上では細い柱が枝のように伸びて一本の大木のようになっている。あの鋼の木こそ、鳥人国家エイボスの都市だ。翼を持つエイボスの民は樹上で暮らし、翼を失った者達はその下を棲家とする。翼の有無は身分にも大きく関わり、生身の翼を持つ者、鋼の翼を持つ者、翼を持たぬ者の三層に分かれたヒエラルキーを形成している。

「もう後悔しても遅いわ。甲虫〔バグ〕になった時点であなたも同じでしょう」

 カマキリは西に向き直る。遠く見える山麓をくり抜いて建設された石造りの都市は竜人の国レプタライトだ。レプタライトの地上部分は一部に過ぎず、その大半は地下で複雑に形成されている。レプタライトの内部では幾つかの有力な竜人の家系が氏族を束ねている。

 カマキリは首を左右に振り、排気口から青い蒸気を漏らした。

「――未練がないって言えば嘘になるんだがな」

「ここで別れてやろうかしら」

 アゲハは唯一の生身の頬をむすっと膨らませる。

「こんな体になっちまった俺にもう国に帰る資格はないさ。あの時、お前が戦場で助けられなければ亡くしていた命だ。俺にはお前しかないよ」

 カマキリは右手でアゲハの頬に触れた。アゲハは口元を緩めてカマキリに身を委ねる。
 アゲハは腕の装置から紐付きのピンを出してカマキリの後頭部の窪みに差し込んだ。二人の全身を青い光が覆い、カマキリの心に流れ込んでくるアゲハの感情。アゲハが繋げてくる時はいつも決まって喜びが大きかったが、同時に不安も抱えていた。平易な黒魔術〔ウィッチクラフト〕の一つ密話〔メッセージ〕があれば何も繋げなくても二人で話すことは出来たが、カマキリはわざわざ共神経〔コネルヴェス〕で清濁合わさった感情を共有してくるアゲハのことが愛おしかった。



[31]

投稿者: 斬黒ナ刃奈火 投稿日:2015年 2月27日(金)07時51分7秒   通報   返信・引用

 レプタライトとエイボスの二つの国に挟まれた位置に、早贄の森と呼ばれる森がある。鋼鉄の木々が林立するその森に、緑も動物達の気配も一切ない。生気のない荒れ果てた大地に刺さる大小様々な鋼の柱が森を模っている。そこに立ち入った者は二度と出ることが叶わない。

「この先が早贄の森か……」
「ここを抜ければ私達は自由になれるのね」
 足の車輪を止めたカマキリに、彼の背に跨るアゲハは応えた。

 カマキリの目は大きなモニターガラスの内側で青く輝き、蜥蜴のように突き出た口元は排気口となり、息をするたびに青い蒸気を排出する。直線的な鋼の折り目をつけられた両頬には鋼のリングがせり出ており、そこから伸びた蛇腹のチューブはカーブして口の両脇のリングに差し込まれている。長方形の鱗状の首で頭を支える体躯は角張った鋼の鎧のような出で立ちで、あばらの辺りは台形の窪みが左右対称に三つずつあり、そこにもリングが等しく用意されている。腕と脚はそれぞれ肩・腰から伸びた何本もの蛇腹チューブに支えられたボックスから伸びる二本ずつの金属ポールが、関節のボックスを繋いでいる。肘と脛は排気口のついた鎧で覆われており、腕や脚の付け根と比べると一回り大きい。足はトーとヒールを分割したブーツ状で、トー側とヒール側にそれぞれ車輪がついている。背中からは三本目の足が蜥蜴の尾のように一本だけ伸び、こちらの先端にも車輪。左手は無数の刃を持つベルトが巻きつけられた剣、右手は人間の手と変わらない精巧に造られた模造品が装着されている。

 対してアゲハはほとんど人間と変わらぬ姿をしている。複眼と金属製の両翅だけが異形として映るが、全身に人とは思えない動きのぎこちなさが残り、体の各所には部位の切れ目となる線が刻まれている。口元だけは生身の肉体を残しており、顎から胸部へ蛇腹のチューブが繋がれている。服装は背中部分が大きく開いた青めのノースリーブス。さらに、左腕部を覆うように排気口つきの装置が括り付けられており、チューブで腕と連結されている。

 二人とも人間とは言い難い鋼鉄で出来た体躯を持つ。彼等は肉体のほとんどを売り払い鋼体に変えた者達で、甲虫〔バグ〕と呼ばれる。完全な肉体を持って生まれること自体が珍しいため、人々が鋼鉄の体を持つことはありふれた事だったが、それでも甲虫〔バグ〕になるまで鋼と一つになることは忌避される。真っ当な国では甲虫〔バグ〕は人間扱いされないから当然の話だ。

 しかし、カマキリとアゲハは望んで甲虫〔バグ〕となることを選んだ。


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